白い海を辿って。
◇第六章◇
離れ離れ。
【Asumi side】
彼の家で夕食を作り帰りを待っていると、静かな部屋にスマホの通知音が響いた。
画面を見ると彼からで、急な会議で帰りが遅くなると書かれていた。
続けて送られてきた"ごめん"という一言から、焦っているような彼の表情が浮かぶ。
大丈夫だよと返してから、夕食にラップをかけてサラダは冷蔵庫に入れる。
季節は梅雨に入り、じめじめとした嫌な天気が続いていた。
そろそろ、一緒に暮らしたいと思っていることを彼に話そうと思っている。
何度も何度も来ている彼の家。
だけど会議で帰りが遅くなるなんて珍しいことだった。
夕食を食べるのを待とうかどうしようか迷って、とりあえず先にお風呂に入って待つことにする。
だけど出てきてからも、彼はまだ帰っていなかった。
「お腹すいたな。」
独り言が部屋に吸い込まれてやけに静けさを感じる。
彼が帰ってきたのは、結局それから1時間以上も後だった。