白い海を辿って。
「おかえりなさい。」
『ごめんな、遅くなって。』
ソファーでうとうとしていた私の髪を撫でながら、彼はその場に座りこんだ。
「お疲れ様。すぐにご飯温めるね。」
『いい。』
立ち上がろうとしたら腕を引き寄せられて、そのまま彼の上に倒れこんだ。
ぎゅっと抱きしめる腕が強くて苦しい。
「どうしたの?」
『なんでもないよ。ただ…今はここにいてくれ。』
絞り出すようにそう言ったきり、彼はしばらく何も話さず、動きもしない。
だから私はどうすることもできず、ただその腕の中でじっとしているしかなかった。
『おはよう。』
翌朝起きてきた彼は一目で寝不足と分かる程に疲れた顔をしていた。
昨夜は食欲がないと言って夕食を食べず、私は彼がお風呂に入っている間にひとりでサラダだけを食べた。
一晩経っても様子の変わらない彼が心配だけど、どう声をかけていいのか分からない。
会議で何かあったのだろうか。