白い海を辿って。

私も1日を上の空で過ごすことになった。

どう考えても悪い話しか想像できなくて、だけど話の内容は想像できなくて。

本当はいつもと同じようにご飯を作って待っていたかったけれど、何も手につかなかった。



「おかえりなさい。」

『ただいま。』


そんなやりとりも、玄関で軽く抱きしめてくれることも、いつもと変わらない。

だけど彼の表情だけが、ずっと硬いままだった。



「ごめん、ご飯できてなくて。冷凍ものでいいかな。」

『明日実。』

「何がいい?チャーハン?うどんもあるけど。」

『明日実。』


聞きたくないと、口が勝手に無駄な抵抗をする。

着替えることもせずソファーに座った彼が、視線だけを隣に向けた。



『先に話したい。』


もうこれ以上は本当に無駄だと諦めて、彼の前に座る。

今日1度も、いや昨夜から1度も目が合っていない。



『明日実。しばらくここには来るな。』

「え…?」


久しぶりに合った目は悲しそうで、だけどきっぱりと言う言葉に迷いはなかった。



< 291 / 372 >

この作品をシェア

pagetop