白い海を辿って。
私も1日を上の空で過ごすことになった。
どう考えても悪い話しか想像できなくて、だけど話の内容は想像できなくて。
本当はいつもと同じようにご飯を作って待っていたかったけれど、何も手につかなかった。
「おかえりなさい。」
『ただいま。』
そんなやりとりも、玄関で軽く抱きしめてくれることも、いつもと変わらない。
だけど彼の表情だけが、ずっと硬いままだった。
「ごめん、ご飯できてなくて。冷凍ものでいいかな。」
『明日実。』
「何がいい?チャーハン?うどんもあるけど。」
『明日実。』
聞きたくないと、口が勝手に無駄な抵抗をする。
着替えることもせずソファーに座った彼が、視線だけを隣に向けた。
『先に話したい。』
もうこれ以上は本当に無駄だと諦めて、彼の前に座る。
今日1度も、いや昨夜から1度も目が合っていない。
『明日実。しばらくここには来るな。』
「え…?」
久しぶりに合った目は悲しそうで、だけどきっぱりと言う言葉に迷いはなかった。