白い海を辿って。

『明日実。』


電話を切ってリビングへ行くと、母から呼び止められた。



「なに?」

『お母さんね、今日警察に行ってきたの。』

「え…?」

『勝手なことしてごめんね。でも警察がちゃんとあの人のことを見張っててくれるのか、もう近付かないように強く言ってくれたのか気になって…。』


勝手なことだなんて思わない。

自分で確かめるには、怖くて聞けなかったことだ。



『深く反省してるみたいだし、真面目にアルバイトしてるそうよ。次また騒ぎを起こしたら今度こそやり直しがきかないって分かってるんじゃないかな。』

「そう…。」

『だから明日実。青井さんに会うくらい、もういいんじゃない?』


会いたいよ…会えるなら。

だけどやっぱり怖い。

私のせいで彼が危険な目にあわないとは限らないのだから。



「本当に反省してるかどうかなんて分からないよ。」

『そうだけど…。明日実、ずっと元気ないから。会いたいんでしょう?』

「会いたいよ…。」


でも。

会いたい気持ちを抑え込んでしまう程、あの人の突然の来訪は恐ろしいものだった。



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