白い海を辿って。
終業後の教習所には、早見さんと所長が残っていた。
あいつは俺たちに"岸井 秋(キシイ アキ)"と名乗り、会議室へ通された。
『大丈夫なんだろうね?』
「はい。俺に用があったんだと思います。」
『どうする早見くん、警察の方は。』
「警察?」
部屋の外に残されていた俺は、2人から思わぬ話を聞いた。
偶然この辺りに来ていた理瀬さんから、教習所の前に怪しい人がいると電話があったという。
俺のことをじっと見ていたと聞いた早見さんは所長と話し合い、警察へ通報しようか迷っていた。
「2人で話したいんで、通報は少し待ってもらってもいいですか。」
『怪しい人ではないんだよね?』
「…彼女の、滝本さんの、元恋人です。」
俺の言葉に早見さんが息を飲む。
早見さんは彼女のことをずっと気にかけてくれていて、彼女に"何か"があったことを知っている。
「ちゃんと話してきます。」
心配そうな早見さんを置いて、俺は1人会議室へ入った。