白い海を辿って。
『あの俺、また警察に通報されるんですか?』
2人になった瞬間、岸井は突然我に返ったように冷静な声を出した。
顔には、不安がいっぱいに広がっている。
「まぁ…俺をつけて待ち伏せしてたんだから、こっちとしては穏やかじゃいられないよね。」
『あの…それは本当にすみませんでした。俺はただ、明日実が今幸せでいるのか知りたかっただけなんです。どうしても謝りたくて、それであのとき一緒にいたあなたを探して…』
急に饒舌になったことから、警察に通報されることを心から怖れていることが分かった。
岸井はその後も明日実にしてしまったことへの後悔や懺悔を語り続け、自分の手によって失った未来や家族の現実も聞かされた。
最初は警察に通報されないために同情をかおうとしているのだと思いながら聞いていたが、少しずつ、本物の後悔が伝わってきた。
どうしても謝りたいと言う想いにも、嘘はないように思えた。
だけどそれ以上に、許せないという気持ちが勝る。