白い海を辿って。
『明日実をぶった手が、無理やり身体を掴んだ手が、今でも忘れられないんです…。』
そんな気持ちが、その一言で爆発したような気がした。
ふざけんな。
そう思ったときには立ち上がっていて、勢いよく椅子が倒れて大きな音を立てた。
『青井くん?』
その音が室外まで聞こえたのか、早見さんがドアを開けて駆け込んでくる。
俺はテーブルを叩きつけた手を動かせずにいて、今すぐにでも殴り飛ばしたい気持ちを必死で抑え込んでいた。
『青井くん、後は俺が話すから。一旦外に。』
「すいません…。」
これ以上ここにいたら怒りにまかせて何かしてしまいそうで、自分でも危険だと思った。
促されるまま会議室を出ると、そこには心配そうな顔をした理瀬さんがいた。
『大丈夫…?』
「えぇ、はい。」
岸井を見つけて連絡してくれたのは理瀬さんだ。
早見さんから岸井がどういう人物なのか聞いたかもしれない。
『警察はもう呼んだから。』
優しい目と落ち着いたその声が、とても温かく俺の心を和らげてくれた。