白い海を辿って。

「ありがとうございました。あいつを見つけてくださって。」

『いや、俺は何も。』


理瀬さんが見つけてくれなければ、岸井は今後も俺を尾行していただろう。

ここで止めてくれたことに感謝しかない。



「あれ…?」


少し冷静になってようやく、理瀬さんの後ろに綺麗な女性がいることに気付いた。

スラっと背が高いモデルのようなその女性は、正直理瀬さんとはあまり結びつかない不思議な組み合わせだった。



『あぁ、こちら同僚の椎野さん。…たまたま一緒にいて。』

『椎野です。噂の青井先生にお会いできて嬉しいです。』

『おい。』

「噂?」


俺と理瀬さんの声がかぶり、椎野さんが明るく笑った。

この様子だと、椎野さんは何も話を聞いていないのだろう。

たまたま一緒にいたって、2人はただの同僚ではないのかもと思う。



『教習生に人気のイケメン教官ですよね?』

「いやそんな…」

『今話すことじゃないだろ。』


親密そうな2人の姿を見たときには、もう完全に冷静さを取り戻していた。



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