白い海を辿って。
「あ。どうも、こんばんは。」
『こんばんは~。』
指定された個室居酒屋に行くと、待っていたのは理瀬さんだけではなかった。
この前も一緒にいた同僚の椎野さんだ。
ひらひらと手を振りながら、仕事終わりとは思えない完璧な笑顔を見せている。
『ごめん。どうしてもついて行くって聞かなくて、むりやり。』
『そんな邪魔者扱いしないでよ。少しは華があった方がいいでしょ?』
『自分で言うな。』
明らかに理瀬さんの方が先輩なのに、全く遠慮のない口調に驚く。
だけど理瀬さんにもこんな人ができたということに、どこか安心している自分もいた。
「仲いいんですね。」
『全然全然!私はただの後輩ですから。』
全然そんな風には見えないが、恋人同士かと言われればそんな風にも見えない。
やっぱり不思議な組み合わせだ。
『まぁ…私がむりやりついて来たのは本当なんですけど。この前のこと聞きたかったんです。』
「え?」
『ちょっと、そんないきなり聞くなよ。』
慌てふためく理瀬さんの隣で、椎野さんはいたって真剣な目で俺を見ていた。