白い海を辿って。

『ごめんな、この人ちょっと唐突なところあって。』

「いえ…そのことを聞かれるんだろうなと思って来てるんで。」

『とりあえず何か注文しよう。椎野さんはその間に落ち着いて。』


飲み物と料理を待つ間に天気の話や職場の話などとりとめもない話をしながら、俺は頭の中で話すことを整理していた。

理瀬さんは、彼女のことをどれくらい知っているのだろう。

岸井のことは?今も通院していることは?

彼女はここで勝手に自分の話をされることを望んでいないはずだ。

だけど、今の俺にはひとりでは抱えきれないことばかりだった。



『もう聞いてもいいですか?』

「はい。」


一通りの料理が揃ったとき、椎野さんが再びあの真剣な目で切り出した。



『あの人、結局誰なんですか?何かされてるんですか?恨みでもかってるんですか?』

『だから一気に聞かない。』

「ふふっ。」


飾ることをしないまっすぐな椎野さんに張りつめた感情がほぐれる。



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