白い海を辿って。
かきむしられるように、胸が苦しかった。
何も知らなかったことも、何の助けもできないことも、今傍にいられないことも。
どんな想いをしてきたのか。
今どんな想いでひとりでいるのか。
会いたかった。
『なんか…追い詰められてたね、青井先生。』
椎野さんがふいに漏らした言葉に顔をあげる。
先程まで個室で向かい合っていた青井くん。
会わないでくださいよと言った低い声。
『今のあの人からは奪っちゃいけないね。』
「当たり前だろ。」
青井くんから滝本さんを奪おうと言い出したのは椎野さんで、青井くんを見に行きたいと言ったのも椎野さんだ。
そこであの男、岸井を見た。
『でも、このまま放っておいても何にも変わらないよ。』
「2人が会わなくなって、あいつがおとなしく引き下がるとも思わないしな。」
『やっぱりどうにかしないと。』
「でも俺たちが首をつっこむことじゃないだろ。」
何かしたいと思う気持ちと、どうにもならないという気持ちで答えが見つからない。