白い海を辿って。

『先生…助けて…。』


そう聞こえた瞬間、俺は立ち上がっていた。

騒がしい店内から外へ出て、一言も聞き逃さないようにスマホを耳に押し当てる。



「大丈夫だから、落ち着いて。今どこにいる?」

『分かりません…誰かにつけられてるような気がして、とにかくずっと歩いてて…。』

「見えるもの全部言って。お店とか景色とか何でもいい。電話は切らないで、できるだけ人通りの多いところを目指して。」


震える声と少しずつ浅くなる呼吸が気にかかる。

早く会いたい。

今駆けつけられるのは俺だけだ。



『理瀬さん!支払い済ませてきました。』


店から椎野さんが俺のバッグを持って飛び出てくる。

通話口を塞いで事情を説明すると、行きましょうと車へ駆け寄った。

椎野さんにスマホを渡し、ハンズフリーに切り替える。


コンビニの名前や見える看板など滝本さんの伝える情報から椎野さんと居場所を推測し、ただ車を走らせた。


今会いに行くから。

どうか無事でいてくれ。



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