白い海を辿って。

『ありがとう。そんなこと言ってくれるの滝本さんだけだよ。』

「あっいえ、なんかごめんなさい。変なこと言っちゃいました。」


本当に何言ってんだろう私。

先生と一緒にいられたら幸せとか、そんなのほとんど告白じゃないか。



『俺も…幸せだと思うな。』

「え？」

『滝本さんといられたら、幸せだと思う。』


あっさりでも簡単にでもない、とても丁寧なその言い方が驚く程心に刺さった。

２人だけの空間、近い距離の中、そんな真面目な顔で言われたらどうすればいいのだろう。



『恥ずかしい話だけど、結婚してからこんな風に幸せだって思ったことなかったんだ。』


こんな風に。

それって、今この時間を幸せだと思ってくれてるってこと…？



『今考えると、妻はなんで俺と結婚したんだろうって思うんだ。俺にプロポーズされたからみたいな、そんな単純な理由だったのかもしれない。』


先生はとてもそんな理由で結婚を決められてしまうような人には思えない。

でも嘘を言っているような雰囲気でもないし、これが本心なのだろう。