白い海を辿って。
先生の部屋はとてもシンプルで、必要最小限の家具と家電だけが置かれている。
ソファーには畳まれていない洗濯物、テーブルの上にはペットボトルやマグカップ。
独り暮らしの男性の部屋らしい光景が妙に落ち着いた。
『ごめん、座るとこなくて。』
「いえ、下で大丈夫です。」
『いやでも掃除機かけてないから。』
慌てて洗濯物を持ち上げて、どこに置こうかきょろきょろと見回す先生がなんだか可愛くて笑ってしまう。
結局そのまま抱えて別の部屋へ運んで行くと、今度はテーブルの上のものを片付け始める。
「すみません。急に連絡なんかして。家まで…。」
気を遣わせてしまっていることが申し訳なくて、連絡してしまったことをまた後悔する。
会いたくなったら連絡してもいいですかと言っておきながら連絡しなかったのも私で、彼と付き合っているからもう会わないと言ったのも私。
あのとき先生に"さよなら"を言わせてしまったのも私で、今日こんな風に突然連絡をしてしまったのも私。