白い海を辿って。

『俺、そのとき本当にいっぱいいっぱいでさ。明日実と会わなくなって、どうすればこの状況を変えられるのか、どうやって明日実を守っていけばいいのか毎日そればかり考えてた。』

「うん。」

『そんなときに理瀬さんに会って、明日実を取られたくないって思って…。』


そこで言葉に詰まった彼の表情は、とても苦しそうで。

私がこんな顔をさせてしまっているんだと思うとつらくて、どうすることもできなかった。



『正直、追い詰められてた。』

「ごめんなさい…。」

『明日実が謝ることじゃない。悪いのは全部俺だ。』


私が知ってる彼は何も悪くない。

だけど、私が知らない彼がいるとしたら。



『どうしようもなく明日実を好きになって、だけど付き合ってる間ずっと理瀬さんが頭のどこかにいたんだ。ようやく安心できたと思ったら今度はあいつが現れて、理瀬さんもまた現れて。』


彼の声が、ひとつひとつの言葉が、的確に1番痛いところを刺してくる。



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