白い海を辿って。
『俺が本当に明日実と2人でいられたことってあったのかな。』
返す言葉がなかった。
最後まで、私が彼だけを好きでいると信じてもらうことはできなかったんだ。
こんな風に言われたら、もう何も言えないよ…。
『そう思ったらさ、何か急にいろんなことがどうでもよくなった。俺だけが明日実を好きで、ひとりで執着してるみたいに思えてさ。』
「そんなことない。私だってはるくんのこと、」
『分かってる。分かってるけど、そのときの俺にはその気持ちが見えなかったんだよ。』
離れていた期間。
電話だけでは伝わっていなかった私の気持ちと、彼の変化。
『暑いな。戻ろう。』
夜とはいえ真夏の空気は体にまとわりつくように不快だった。
そんなことにも気付かない程、必死で彼の言葉を追っていた。
車に戻り冷房を効かせると、彼は何も言わずに発進させる。
私の家に向かっている車内で、何かを言おうとして迷っているような彼の気配に聞きたくないという思いだけが強くなる。