白い海を辿って。

「ねぇ、」


強く抱きしめられて自由に動くこともできず、小さな抵抗しかできない。

すぐに深くキスをされて、言葉も封じられる。


こんなことをする人じゃなかったのに。

こんなところで、こんな風に。

だけどそうさせてしまう程に彼を追い詰めて、ストレスでいっぱいにさせてしまったのは私なんだ。



「やめて。」


顔が離れた瞬間にようやく言えた声は小さくて、何の力も持たない。

彼の強引な手が、力が、少しずついろんなものを奪っていく。



「はるくん。」

『いいだろ?久しぶりに会えたんだから。』

「私のこと、もう好きじゃないんでしょ?本当のこと言って。」


彼の手がぴたりと止まる。


会ったときからもう気持ちが離れているような空気を纏って。

私と一緒にいない気楽さに気付いて、だけど会ったらやっぱり好きだったなんて。


今この瞬間のためだけに言ったことだと、もうとっくに気付いている。


何も答えずに、彼は私のTシャツを掴んだ。



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