白い海を辿って。

もうどうにでもなればいいと諦めた瞬間、力が抜けた。

彼も今の私みたいに、いろんなことがどうでもよくなったんだろう。

長く抱いてきた気持ちなんて、そう気付いた瞬間に消えてなくなってしまう。


沢山のことを考えすぎて、もう何も考えたくなくなって。

何も考えなくていい状況はとても楽で、シンプルで。

また沢山のことを考えなきゃいけないところになんて、もう戻りたくないと思う。


会わなかった間に彼に起きた心境の変化を、彼の下でやけに冷静に考えている自分がいた。


こんな風にされてももう怖がらずに受け入れてしまえる程、私は彼のことが好きだった。



『ごめん。』


こんなことになるなんて、会う前には想像もしていなかった。

悲しさよりもやるせなさが勝って、急に彼の前から消えてなくなりたいと思う。



「今までありがとう。」

『明日実!』


慌ただしく服を着て部屋を飛び出した私を彼が追ってくる。

全力で走ったつもりだったけど、体に力が入らなくてすぐに立ち止まってしまった。



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