白い海を辿って。
『明日実、悪かった。もう1回ゆっくり話をさせてくれ。』
「何を?今日別れてほしいって言いにきたんでしょう?」
『違う。違うんだ…。』
彼はどこからどう見ても落ち込んでいる。
会ったときのすっきりした表情は、今はどこにも見当たらない。
『正直今日は何も考えてこなかった。明日実に会ったときに思う気持ちがすべてだって思ったから。』
「…どう思った?」
『好きだった。本当に…好きだった。』
好き、だった。
その時点で過去形になっていたのに、彼は私を家まで連れてきた。
「じゃあ今日は…本当に最後にしたかっただけなの…?」
思わず彼の手を掴んで聞いた声は震えていた。
これまでの、ずっと優しかった彼はどこへ行ったのだろう。
「全部…嘘だったの…?」
こんなことが言いたかったわけじゃないのに。
彼の気持ちは、私が1番受け取ってきたはずなのに。
「俺はいなくならないって言ってくれたよね…?」
ずっと一緒にいるって。
そう思ってたよ。