白い海を辿って。
『勝手に話したくないんだと思うよ、2人のことだから。』
「でも俺、ひどいことを…」
『俺の方が聞きたくないから。』
柔らかい中から発せられたはっきりとした拒絶に言葉を飲み込む。
好きなんだな…滝本さんのことが。
「本当にすみません。」
『俺は、2人が納得して別れたならそれでいいと思ってる。』
「納得…。」
理瀬さんから離すように付き合って、一方的に独占欲をつのらせて、勝手に疲れて、最後にひどいことをして別れた。
付き合っていた期間は間違いなく2人のものだった。
最後に思い切りひとりにしてしまったことは、完全なる俺だけの責任。
「本当に好きだったんです。こんな好きになってどうすんだってくらい。…でも今思うとずっと無理してました。理瀬さんに取られたくなかっただけだったのかもしれません。」
『それはひどいな。』
冗談ぽく言おうとしたけれど笑うことに失敗したように、理瀬さんの表情がひきつった。
理瀬さんに取られたくなかった。
自分が惨めな思いをしたくなかった。