白い海を辿って。
『俺は、ただ滝本さんを好きなだけなんだ。』
「はい。」
『もういいよな?』
理瀬さんは、ずっと滝本さんが好きだった。
ただ、好きなだけだった。
俺みたいに身勝手な欲望も嫉妬もなく、ただ。
『守りますって約束、破ったら許さないって言ったよな。』
「はい…。」
『滝本さんのことは心配しなくていいから。だから、もう二度と会わないでほしい。』
はい、という言葉以外に言えることが何もなかった。
俺が守ります、絶対に渡しません、幸せにします。
自分が言ったことはもちろん覚えている。
ちゃんと守ってあげてほしいと言われたことも、破ったら許さないよと言われたことも。
あの頃は、こんな風に突然限界がくることなんて想像もしていなかった。
ずっと滝本さんが好きだと、ずっと一緒にいると信じて疑わなかった。
ひとりになって打ちのめされていた理瀬さん。
ひとりになって解放されたように気楽さを感じた俺。
悪いのは全て俺だ。
今の俺には、2人が幸せになってほしいと願うことしかできなかった。