白い海を辿って。
何気ないこと。
【Asumi side】
暑い暑い夏の日に青井さんと別れて、ひとりで秋を迎えた。
…ひとりで?
ううん、違う。
『滝本さん。』
家の近くの公園、ベンチにぽつんと座っていた私に先生の声が届く。
「ごめんなさい。もうそんな時間でしたか?」
『家の前で待ってるって言ってたのにいないから心配したよ。』
「ごめんなさい。少し歩きたくて。」
これから一緒にご飯を食べに行く約束をしているけれど、先生は隣にそっと座った。
あの日、先生が助けてくれてから私たちはたまにこうして会うようになった。
仕事以外は家にこもりがちな私を、先生は優しく外に連れ出してくれる。
『謝りすぎ。』
「あ…ごめんなさい。」
『謝りすぎ。』
2度目は優しく微笑みながら、だけどどこか少し悲しそうな声。
いつだったか、こんな風に指摘されたことがあった。
だけどやっぱり、いつも謝っていなければ安心できない程に迷惑をかけているという思いが強い。