白い海を辿って。

『そっか。そうだったんだね。』

『てか言ってくれて良かった!聞いてなかったら私酔ったとき絶対無理やり飲ませてた!』


手元に落としていた視線が自然と上にあがる。

目の前にいる2人は、先程までと何も変わらないいつもの2人だった。



『椎野さんそれやりそうだな。本当良かったよ、言ってくれてありがとうね。』


穏やかで柔らかい笑顔。

人をほっとさせるような、優しさに溢れた笑顔。



「飲まされそうだなって、ちょっと思ったんです。」

『もう~滝本ちゃんまでそんなこと言う~。』

『滝本ちゃんて。』


何気ない話みたいに3人で笑い合えることが、とても幸せだと思った。


面倒をかけたくないと、普通でいたいと思いすぎて自分で自分の首を絞めていた。

必要以上に怖れて、反応して、自分だけが傷ついてるみたいな顔で大切な人を傷つけた。


彼との最後の日、私は何かを失ったと思った。

だけど本当は、失ったことで何かを得たんだと思う。


大切な人を大切にする為には、強くならなきゃいけないことを知った。



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