白い海を辿って。

『あのね~滝本ちゃん。』


その後椎野さんは順調に酔っぱらって、私と理瀬さんは烏龍茶でひたすら付き合い続けている。

平和で楽しい夜。

椎野さんは大人だし私よりもずっと人生経験が豊富だろうけど、どんなときも同じ目線に立って接してくれる人だ。



『理瀬さん言ってたんだよ。滝本ちゃんが幸せでいてくれればそれでいいって。』

「え?」

『何言い出すんだよ。』


突然話の矛先が自分に向いて、理瀬さんが焦ったように椎野さんをなだめる。

私は椎野さんの言葉が、あまりにもまっすぐに心に刺さって何も話せずにいた。



『普通そんなこと言えないじゃん。でも理瀬さんは本気でそう思ってて、そんな理瀬さんが幸せにならないでどうするのって思ったの。』


理瀬さんの制止も聞かずに話し続ける椎野さんの言葉が、ひとつずつ胸に落ちていく。

理瀬さんはあの日言ってくれた。

ずっと幸せでいてくださいと。

それからも、幸せでいてくれればいいと思ってくれていたなんて…。



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