白い海を辿って。
せっかくの先生の誘いを断わる理由などなく、すぐに返信しようとしたけれどやめた。
電話にしよう。
声が聞きたい。
とにかく電話が苦手で、友達からの電話にも緊張してしまう自分がそんな風に思うなんて初めてのことだ。
『もしもし。』
「あ、滝本です。電話の方が早いかなって思って…。」
いざ先生の声を聞くと心臓がドキドキしてしまう。
声が聞きたくて、なんて素直で可愛い台詞などとても言えない。
『ありがとう。嬉しいよ、声が聞けて。』
なのに先生は、平気でそんなことを言う。
大人って本当にずるいな。
「私も」と言えない私はまだまだ子供だ。
「あの、火曜日ですよね?」
『うん、火曜日休みだって言ってたから。どうかな?』
覚えてて、くれたんだ。
こんな風に先生の言葉に一喜一憂する自分は、やっぱり子供だろうか。
「大丈夫です、私も先生と出かけたいです。」
『良かった、じゃあ火曜日ね。どこか行きたいところある?』
先生の声が少し嬉しそうで、私も嬉しくなる。