白い海を辿って。
今の妻に元妻を紹介していいのだろうか。
気付いていないうちに別れるべきだったよな。
『娘さんですか?可愛い。』
気まずい空気が流れそうになったとき、明日実が柔らかい声で言った。
『うん、菜奈って言うの。』
『菜奈ちゃん。こんにちは。』
顔の前で挨拶をする明日実を、聡美が安心したように眺める。
その視線が俺の方へ向いて、そっと微笑んだ。
『秀人がこんなに可愛い子と結婚してたなんて。』
「まぁ、おかげさまで。」
『明日実さん。お会いできて嬉しかったわ。』
『私もです。』
にこやかに笑い合う2人を不思議な気持ちで眺める。
こんな日が来るなんて、想像すらしていなかった。
『じゃあ、私行くね。』
「あぁ。」
『お気をつけて。』
明日実が菜奈ちゃんに手を振ると、小さな手を一生懸命振り返してくれた。
温かい光景に、ほっと胸をなでおろす。
きっと聡美も同じことを思っているだろう。
幸せでいてくれて良かった。