白い海を辿って。
『えらくお綺麗な方と結婚してたんですね。』
「そう…だね。」
『いいなぁ、モデルさんみたいで。』
遠ざかっていく背中を見送りながら明日実がつぶやく。
嫌味でもなんでもない素直な言葉に笑みがこぼれる。
「行こうか。」
『はい。』
棚の前に戻ると明日実がすぐにガイドブックを手に取る。
もう買うものを決めていたようだ。
外に出ると、やけに強い日差しに一瞬目を細める。
隣を見ると明日実は買ったばかりのガイドブックを手にそわそわしていた。
早く読みたくて仕方がないのだろう。
「このまま帰るか?」
『え?』
「それ、ソファーに座ってゆっくり読みたいんだろ。」
『やっぱりお見通し。』
ぱっと俺の手を取って歩き出した明日実の表情は、いつもと変わらず明るい。
どんな俺も肯定して許してくれる、懐の深い笑顔。
これまで何度も明日実に救われてきたように、これから先も何度も救われていくのだろう。