白い海を辿って。

『それって簡単に思えることじゃないから。きっと今までも、誰かに対してそんな風に願ってきたんだろうなって思ったんです。』

「明日実…。」

『嫌いになって別れたんじゃないから、気にしてるだろうなって。』


お見通しなのは、明日実の方だった。

自分が幸せならそれでいいなんて思えず、再婚するときには伝えようかどうかギリギリまで悩んでいた。



『私に気を遣って、ずっと自分からは会いに行けなかったんじゃないですか?』

「ごめん。明日実に気にしてほしくなかった。」

『私、気にしませんよ。今一緒にいられることがすべてだって思えるから。』


テーブルにマグカップを置いて、そっと俺の手を握る。



『幸せでいてくれて良かったですね。』


明日実もそう思ってくれていたことに胸を掴まれて、強く抱きしめた。

こんなにも素敵な人と出会えて今一緒にいられることが、本当に幸せだった。



「ありがとう。」


どれだけ強く抱きしめても足りない気がした。

こんなにも大切に想える人を、これからもずっと大切にしていきたい。



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