白い海を辿って。

『え?』


冷静になっても、今言ったことを取り消す気持ちにはならなかった。

会いたかった、今すぐ先生に。


気を遣わせてごめんと謝った先生に「何も悪くないよ」と言葉で伝えることができずに、ただ顔が見たくて仕方なくなってしまった。



『滝本さん、今どこにいるの?』

「家です。」

『俺、今仕事終わって帰って来たんだけど、出てこられる?』

「はい、大丈夫です。」


時計の針は夜の9時を指していて、外はもう真っ暗だ。

でも、今そんなことは関係ない。

会えるのなら、時間なんて。



『近くまで迎えに行く。着いたら電話するからそれから出て来て。』

「はい、待ってます。」


先生に家の場所を伝えて電話を切る。

着替えてから髪を整えて少しだけメイクをする。


握り締めた携帯が鳴る瞬間を、どうしようもなく愛しい気持ちで待った。


今車を走らせている先生も、私に会いたいと思ってくれているのかな…?



< 39 / 372 >

この作品をシェア

pagetop