白い海を辿って。
『え?』
冷静になっても、今言ったことを取り消す気持ちにはならなかった。
会いたかった、今すぐ先生に。
気を遣わせてごめんと謝った先生に「何も悪くないよ」と言葉で伝えることができずに、ただ顔が見たくて仕方なくなってしまった。
『滝本さん、今どこにいるの?』
「家です。」
『俺、今仕事終わって帰って来たんだけど、出てこられる?』
「はい、大丈夫です。」
時計の針は夜の9時を指していて、外はもう真っ暗だ。
でも、今そんなことは関係ない。
会えるのなら、時間なんて。
『近くまで迎えに行く。着いたら電話するからそれから出て来て。』
「はい、待ってます。」
先生に家の場所を伝えて電話を切る。
着替えてから髪を整えて少しだけメイクをする。
握り締めた携帯が鳴る瞬間を、どうしようもなく愛しい気持ちで待った。
今車を走らせている先生も、私に会いたいと思ってくれているのかな…?