白い海を辿って。
『あー最近全然買い物行ってないわ。』
とても座り心地の良さそうなリクライニングチェアに大きくもたれながら倫子さんがつぶやく。
自宅を仕事場としているのに、倫子さんはいつもオシャレでメイクも髪形も完璧だ。
自分の服は商品を仕入れるときについでに買ってしまうらしく、近くにできた大型のショッピングモールにも行ったことがないらしかった。
「私も全然行ってないですよ。」
服もバッグもコスメも、あまり欲しいとは思わない。
買ったって着て行くところもなければ見せたい人もいないのだから。
『また行ったらどんなのが流行ってるか見てきてね。』
「はい、調査してきますね。」
そんなことを話して笑っていたら少し行ってみたくなって、帰りに寄ってみようかと考える。
周囲からの圧力に負けて教習所へ通うことを決めたのは半年前のことだ。
とくに何事もなくちょうど2ヶ月で無事に免許を取った。
そして車に乗るようになってから、私の行動範囲は確実に広がっていた。