白い海を辿って。
数十分後に先生から電話があり、私は急いで部屋を出る。
家の前に車を停めると近所の人に怪しまれる可能性があるからと、先生はすぐ近くのコンビニの駐車場で待ってくれていた。
『遅くなってごめん。』
「いえ…私の方こそ、変なこと言ってごめんなさい。」
『ううん、嬉しかった。』
そう言われて先生の顔を見ると、また真正面から目が合ってしまう。
「先生、私…。」
『どうした?大丈夫?』
なぜだろう。
自分でも分からないけれど涙が溢れてくる。
そんなに先生に会いたかったのだろうか。
…違う。
もちろん会いたかったけれど、今泣いているのは、ただただ嬉しいからだ。
「こんなワガママ言ったの初めてです。」
『え、本当に?』
ずっと、自分の気持ちに蓋をして生きてきた。
弱くてずるくて、自分に卑屈になって、こんな私にワガママを言える権利なんてないと思っていた。
自分が「会いたい」と言えばすぐに会いに来てくれる人がいるなんて、思いもしなかった。