白い海を辿って。

『滝本さんは、優しいね。』

「…え?」


先生は車のエンジンを切ってシートベルトを外すと、体を私の方に向けた。



『ずっと気になってた、滝本さんのこと。』

「私のこと…?」


思いもよらない言葉だった。

先生の意識の中に、少しでも私が存在していたなんて。



『高嶺先生と青井先生、覚えてる?』

「はい、お世話になったので。」


高嶺先生と青井先生も私が通っていた教習所の教官で、先生とは同僚になる。

人と接することが苦手な私でも気楽に話すことができた数少ない先生で、とくに高嶺先生は担当だったこともあり良くしてもらった。



『滝本さんに会ったことを話したら2人が言ったんだ。滝本さんは、不安なことや心配なことがあっても自分からはそれを言えない子だって。』

「え?高嶺先生と青井先生がですか?」

『そう。でも俺はそれを聞いてもピンとこなかった。俺の中では、滝本さんはしっかりしてるイメージだったから。』


私に対するイメージを先生が持ってくれていたことも、高嶺先生や青井先生がそんな風に思ってくれていたことも、初めて知った。



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