白い海を辿って。
『それから思い出してみたんだ、滝本さんが通ってた頃のこと。滝本さんとどんな話したかなとか。でもやっぱり変わらなかった。』
「変わらなかった?」
『しっかりしてるイメージのままだった。2人が言ってたような滝本さんを、俺は知らない。』
知らない、という言葉が寂しく響く。
先生に自分のことを知ってほしいと思う一方で、知られたくないと思う自分も確かにいて。
私が心を開いて本当のことを全てを話したなら、優しい先生はきっと受け入れてくれる気がする。
だけどそれを、自分を受け入れてもらうための手段にしたくない。
心に傷を負っています、だから大切にしてくださいなんて、そんな擦り寄るような方法で先生との距離を縮めたくはなかった。
「ねぇ、先生?」
『ん?』
「私、先生にはしっかりしてるって思われたかったんです。」
私は心療内科に通っているから。
毎日薬を飲んでいるから。
それを悟られないように、しっかりしてると、普通の子だと思われたかった。