白い海を辿って。
◇第二章◇
本当に好きな人。
【Shuto Side】
俺の生活は明らかに変わり始めていた。
妻が出て行ったことよりも、滝本さんとの距離が縮まっていくことの方がずっと大切になっている。
ひとりになった俺の日常に、滝本さんはあまりにも自然に入ってきた。
元からそこに居場所があったように、すとんと、落ちるように。
滝本さんを知りたい気持ちが日に日に大きくなっていき、滝本さんを知らない悔しさも日に日に大きくなっていく。
まさか28歳にもなってこんな年下の女の子を好きになるとは思いもしなかった。
そうだ、俺は滝本さんのことが好きなんだ。
だからこそ気になる。
滝本さんが何を抱え、何を隠しためらっているのか。
俺に、何ができるのか。
妻の荷物がなくなった家、テーブルに置いた離婚届を見ながらそんなことを考えていた。
まずはやっぱり、ちゃんと独身にならないとだよな…。
一緒にいるところを誰かに見られることを彼女は心配していた。
出かけるならば遠方でないといけない、近場は危険だ、そんなことを滝本さんに考えさせてしまったのは俺が既婚者だからだ。