白い海を辿って。
後は妻が書けばいいだけの状態にして、離婚届を封筒に入れる。
彼女の実家の住所を書いたけれど、実家にいるとは限らない。
でもその他に行く場所も思い当たらないし、携帯はずっと着信拒否の状態になっているから実家に送るしかない。
こんな状況で妻が離婚を渋る理由はないだろうし、俺が正式に独身に戻る日は遠くないはずだ。
『どうした、改まって話なんて。』
翌日、仕事の空き時間に話したいことがあると早見さんに声をかけた。
「俺たち離婚することになりました。」
『はっ?』
言い淀んでも仕方ないと思い単刀直入に言うと、早見さんが大きく驚いた。
そりゃあそうだ。
早見さんには結婚前から事あるごとに相談に乗ってもらっていたし、式にも出席してもらっている上に乾杯のスピーチまでしてもらった。
『急に指輪外したから気にはなってたけど、何も離婚って…早まりすぎなんじゃないのか?』
「いえ、もう家出てったんですよ。携帯も繋がらないしどこにいるのかも分からなくて。もう戻るのは無理だと思います。」
俺の言葉を聞いて、早見さんは小さく溜息をついた。