白い海を辿って。
「自分でもそう思います。決め手がなんだったのか思い出せません。」
『そのことに早く気付けただけも良かったのかもな。見て見ぬ振りしたままズルズルと生活するよりもさ。』
「そうですよね…そう思うしかないですよね。」
ちゃんと自分自身を見つめられていたら。
ちゃんと妻と向き合っていられたら。
妻にバツを付けなくて済んだ。
滝本さんにも、変な気を遣わせずに済んだ。
『で?』
突然、早見さんが興味深そうに聞いてきた。
「で、って…なんすか?」
『本当に好きな子でもできたのかなって思ったんだけど。』
「えっ!?」
心を読まれたように今の状況を言い当てられて、思わず大声で反応してしまった。
本当に、好きな子…。
“他に好きな子”ではなく“本当に好きな子”と聞かれ、もちろん真っ先に浮かんだのは滝本さんの顔だ。
滝本さん以外にはいない。