白い海を辿って。
「入所の相談って何ですか。」
入所するにはネットから申し込むことができるし、直接相談に来る人は少ない。
何か余程の事情があるのか。
『お母さんに言われたんだ。できるだけ他の先生方には知らせないでほしいって。だから俺が今勝手に話すことは滝本さんのためにならない。』
もっと知りたいと言った俺に、話すのは今度でもいいですかと滝本さんは答えた。
どうしてもすぐには話せないことが何かあって、全てではなくても早見さんはその断片を知っている。
「人には知られたくないようなことなんでしょうか?」
『それは何とも言えないけど、少なくとも俺は滝本さんを気にして見るようになったし、そういう配慮はしなきゃいけないと思った。』
滝本さんが通っていた頃に早見さんから滝本さんの話を聞いたことは1度もなかったけれど、実際は他のどの教官よりも滝本さんのことを理解していた。
俺が滝本さんのことをどれだけ知ろうとしても知ることができないはずだ。
滝本さんの事情は早見さんのところで固く守られていたのだから。