白い海を辿って。
どれだけ聞いても、どれだけ話しても見えてこないその素顔。
どうしてそこまで本当の自分を隠すのか。
その理由はどこにあるのか。
「早見さんも全部は知らないんですか?」
『知らないよ、お母さんから聞いたこと以外は。滝本さんは話が自分に向くことを極端に恐れているような気がしたし、だから本質までは聞けなかった。』
それは、俺も滝本さんと話して感じていたことだった。
核心に近付こうとすると、すっとかわされる。
相手を傷付けず、とても自然に。
そうすることに慣れているように。
『まぁ俺たちなんて所詮ただの教官だからな。たまに人生相談してくる生徒もいるけど、基本的に深く関わることはない。自分のことなんて話さない子の方が多いだろ。』
「そうですね。」
『でも滝本さんのことはよく覚えてる。何か引っかかるものがあったのは事実だよ。』
全く同じ思いだった。
滝本さんのことはよく覚えている。
教官と生徒という関係ではなく、できればもっと分かり合える距離にいたいと思うから。