白い海を辿って。
「ありがとう。滝本さんは俺なんかよりよっぽどしっかりしてるね。」
『そんなわけないじゃないですか。』
また自然に笑ってくれた笑顔を見て、今までに感じたことのないような喜びが込み上げてくる。
やっぱり俺が知っている滝本さんはしっかりしていて、それが本当の滝本さんの姿なんじゃないかと思えてきた。
掴み所がなくて、近付けたかと思ったらすっと手からこぼれ落ちてしまうけれど。
だからこそ知りたいと思うし、もっと近付きたいと思う。
「ひとつお願いがあるんだけど。」
『なんですか?』
「服を選ぶのを手伝ってほしいんだ。」
『服?』
唐突な俺のお願いに、滝本さんは不思議そうに首をかしげた。
「妻が買った服を処分しようと思って。恥ずかしいけど、妻が選んだものばかりだから。」
『え、捨てちゃうんですか?』
「うん、いいんだ。もう着ないから。」
滝本さんを好きになったから、もうあの服は着ない。