白い海を辿って。

滝本さんは派手な妻とは正反対だ。

髪は綺麗な黒髪で、肩に乗るくらいの髪をくるんと内巻きにしている。

服も決して派手ではなく、かといって地味でもない落ち着いた可愛さで、メイクもいつもナチュラルだ。

滝本さんが地味だと言っているわけではないが、何の気負いもなく隣にいられる。


周りからはどう見えているだろう。

気付けばそんなことを考えていた。



『映画館はこれくらいの雰囲気が1番好きだなぁ。』

「あ、それ俺も思った。」


買ったばかりのポップコーンを大事そうに持ちながら滝本さんがつぶやいた言葉は、先程俺が思ったことと同じだった。



『同じですね。』


本当に嬉しそうに言う彼女の素直さにどんどん惹かれていく。


可愛いな。

ひとりそう思って照れて、照れ隠しに滝本さんの腕の中からポップコーンをつまみ食いする。


滝本さんといる時間が好きだと、そう思っている自分が確かにいる。


今まで過ごしてきたどの時間よりも、遥かに楽しくて幸せだ。



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