白い海を辿って。
『私が服を選ぶの、また今度にしませんか?』
「え?」
そこでやっと目が合ったけれど、感情を読み取ることはできなかった。
『だって先生、まだ離婚してないんですよね?奥さんとちゃんと話した方が…余計なお世話かもしれないけど、ちゃんと話した方がいいと思うんです。』
滝本さんは、伝えたいことを精一杯、一生懸命に話してくれる。
『なんで離婚しようと思ってるのかも分からないなんて…そのまま終わりにしちゃうのは寂しいですよ。もしかしたら奥さんはまだ先生のことが好きなのかもしれないし…引き留めてくれるのを待ってるかもしれない。』
ずっと自分が目を逸らしてきたことを、こんなにもまっすぐに言葉にする滝本さんがとても眩しかった。
このまま終わることを妻は寂しいと思ってくれているのだろうか。
俺が引き留めるのを待っているのだろうか。
だとしても、俺たちはまたやり直そうとするだろうか。