白い海を辿って。
いや、違う。
俺が今望んでいることは、妻とやり直すことじゃない。
滝本さんと過ごす時間を増やすことだ。
だから、
「うん、妻と話してみるよ。」
妻としっかり話をして、きちんとけじめをつけなければいけない。
「だから待ってて。」
『え?』
「ちゃんと話してくるから、それまで、待ってて。」
『先生…。』
俺の言葉の意図が伝わったかどうかは分からない。
ただ単に、服を選ぶ選ばないの話だと思っているかもしれない。
それでも、俺が今守るべき場所であり帰って来る場所は、ここでありたかった。
『ずっと待ってます。先生が離婚することになっても、元に戻ることになっても。私はずっと、ここで待ってます。』
「ありがとう。」
あぁ、俺は滝本さんに救われてばかりだ。
それでも今この瞬間、好きだと思っているのはもしかしたら俺だけじゃないかもしれないと、ほんの少しだけそう思えた。