白い海を辿って。
教習に通っている頃、とにかく私は自分のことを隠したかった。
何もない風にしていれば私のことなんて誰も気にしないだろうし、深く聞かれることもないだろうと思っていた。
だけど2人きりの車内で何も話さない時間は結構気詰まりで、先生たちは様々なことを聞いてきた。
学生?社会人?何の仕事?
当たり前のように出てくる質問は、誰もが皆当たり前のようにそのどれかに属しているからだろう。
不自然にならないように、精一杯普通に答えたつもりだ。
先生たちには他の子と同じように普通の子だと思われていたかった。
とくに、理瀬先生には。
だけど早見先生は違っていて、深く何かを聞くことはなくいつも優しく気にかけてくれた。
体調のことを気遣ってくれたり、困っていることがないか聞いてくれたり、私の中で早見先生がどんどん信頼できる先生になった。
「話さなきゃな。」
早見先生から何かを聞いていたとしても、私からしっかりと、先生に話さないといけない。