白い海を辿って。
後悔と現実。
【Shuto Side】
4年間の結婚生活が終わった。
話がしたいと妻の実家へ行った俺に突き付けられたのは『好きな人ができた』という妻からの言葉だった。
知らなかった。
全くそんな素振りも見せなかったから。
いや、俺が見ていなかっただけか。
『秀人のこと好きだったよ』と言った妻の言葉に嘘はなくて、でもはっきりと過去形にされていることが全てだった。
結婚してから俺が何を考えているのか分からなくなり、自分がそこにいる意味も分からなくなったと妻は言った。
俺の穏やかなところが好きだったけれど、その穏やかさは感情がないということなんだと思うようになったと。
本当に私のこと好きだった?いつからどうでもよくなったの?と聞かれた。
なにひとつ、答えることができなかった。
妻から好きだと言ってもらえて付き合って、その関係を長く続けられたから結婚しようと思ってプロポーズした。
本当に好きだった。
どうでもよくなんて、今だってなっていないはずだ。
でも、それを言葉にできない俺は最低な人間で、妻を幸せにできなかったことへの後悔が猛烈に押し寄せてきた。