白い海を辿って。
『あとはなんだっけ…あ、駐車。バックで停めるのが苦手って言ってたよね?』
「もう苦手どころじゃないですよ、本当にできなくて。駐車場が狭いところには行けないです。」
真剣に困っているのに、先生は声をあげて笑った。
『そんなの、前から突っ込んで停めれば良いじゃん。』
「斜め向きますから。」
『はははっ。』
やっぱり先生は面白そうだ。
自分が笑われていることも忘れて、こんな風に笑う人だったな…と見惚れてしまう自分に驚く。
先生は男性にしては小柄な方で、雰囲気からは小動物を思い起こさせた。
暗めの茶色に染めた短髪で、爽やかで優しくて人当たりの良さそうなイメージ。
いつも穏やかに笑っていて、格好良いと言うよりは可愛いと言う表現の方がしっくりくる。
そういえば年齢を聞いたことがなかったけれど、たぶん20代半ばくらいだと思う。
同い年くらいに見えなくもないけれど、さすがにそれは失礼な気がして言葉を飲み込む。