白い海を辿って。
そう言おうとして言葉に詰まる。
そんなことを、もう何度も早見さんに聞かせてしまっている。
「情けないです。」
『離婚する夫婦なんて、お前が思ってるより多いぞ。』
そんなことは分かっているのに、俺1人だけが失敗して、俺1人だけが結婚に向いていないような気持ちになる。
早見さんの左手には今日も変わらず指輪があって、家に帰れば奥さんと子供さんが待っている。
そんな健やかな家庭を、俺が築ける日は来るのだろうか。
『滝本さんには…?』
「会ってません。連絡もとってないです。」
遠慮がちに聞いた早見さんに端的に答える。
それでも俺が会いたいと思っていることなんてきっとお見通しだろうけど。
『そうか。連絡くらいなら、俺はとってもいいと思うけどな。』
誰かに許されても、バツイチの身は想像以上に重たかった。
本当は声が聞きたい。
本当は会いたい。
そんな気持ちを今日も抑え込む。