白い海を辿って。
1人取り残された夜の駐車場で、必死に気持ちを落ち着かせる。
思い過ごしだ。
青井くんが滝本さんに会った場所を聞こうとしたなんて。
きっと本当に、高嶺くんと滝本さんの話をしていただけだ。
そう自分に言い聞かせながら、ようやく車に乗り込んだ。
それからしばらく、青井くんに何かを聞かれることはなかった。
離婚のことも、滝本さんのことも。
「…あれ、何かあったんですか?」
教習を終えて教官室へ戻ってくると、数人の教官や受付のスタッフが集まって何やら話し込んでいた。
『あぁ、理瀬先生。聞いてくださいよ。』
受付の女性スタッフが俺に手招きをして輪の中に入れてくれる。
『またなんです、青井先生。』
「え?」
『また生徒から告白されたんですよ。』
へぇ…というまぬけな声が漏れた。
これまでにも何度か青井くんを好きになって想いを伝える生徒がいた。
手紙を渡されたり直接告白されたり、その形は様々だけど、俺が知る限りでも数回ある。