白い海を辿って。
動き出した日々。
【Asumi side】
会いたくなったら連絡してもいいですか。
先生にそう言ってから、私は1度も先生と連絡をとっていない。
あの日見た寂しげな先生の横顔と、待ってると言った自分。
私が連絡すれば会えるのかもしれないけれど、先生が去って行ってしまった心の穴は埋まらないままだ。
寂しい、と思うことが多くなった。
先生の声が聞きたい、会いたい、そう思う度にその寂しさは大きくなっていく。
そんな日々をただ過ぎるままに送っている中で、気付けば先生と再会したあの映画館へ向かっている自分がいた。
偶然なら会っても許されるんじゃないかなんて、そんな微かな糸にすがって。
でも会えるわけがなかった。
あんな偶然は、もう起こらない。
『滝本さん。』
だからその人に会ったとき、私は本当に驚いた。
「え…青井先生?」
そこにいたのは、私が通っていた教習所の青井先生だった。
たぶん理瀬先生より若くて、先生よりずっと人気があったからよく覚えている。