白い海を辿って。

「どう、して…?」

『不審に思ったのならごめんね。でも俺は、それを伝えにここに来たんだ。』


先生はもうここに来ないということを伝えに?

その為だけに、私と偶然出会おうとした?

どう整理しようとしても状況が飲み込めなくて戸惑う。



『どこか入ろうか。』


仕事終わりに立ち寄った水曜日の夕方。

それでも人は結構いて、立ち止まる私たちの傍を絶えず人が行き来する。

ゆっくり話すには、少し周囲が騒がしかった。



「先生はもうここに来ないってどういうことですか?」


それでも歩き出そうとしていた青井先生の背中に声をかける。

今、聞きたかった。



『離婚して引っ越したからだよ。ここからは少し遠い。』

「そうなんだ…」


そういえば、新しい物件を探していると言っていた。

そうか、ここからは遠いところへ引っ越したんだ。



『どこか入ろう。』


もう1度そう言った青井先生の後ろを、今度は素直について行く。

話はそれだけだったのかもしれない。

でも、どうして青井先生がそれだけを伝えるためにここに来たのかが気になったから。



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