白い海を辿って。

『ここは空いてて良かったね。』


ショッピングモールの中にあるカフェへ入り向かい合って座ると、青井先生はようやく頬を緩めた。

ホットココアのマグカップをそっと両手で包むと、あの日先生にもらったココアの温もりを思い出す。



『ごめんね、突然変なこと言って驚かせて。』

「いえ…」

『正直に話すと、俺は何も知らないんだ。理瀬さんと滝本さんのことを。』


まだ湯気の立つコーヒーを飲んで、青井先生は何から話そうか迷うように俯く。



『滝本さんに偶然再会したって話を理瀬さんから聞いて、俺も久しぶりに会いたいなって思った。でも会う方法もないし、理瀬さんもそれきり会ってないんだろうと思ってたから聞けなくて。』


何の嘘も飾りもない、素直な言葉だった。



『でも、この前たまたま早見先生と理瀬さんが話してるのを聞いてしまって。』


トクン、と心臓が跳ねる。


先生は何を話していたのだろう。

青井先生は何を聞いたのだろう。



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